愛犬のシニア期のケアについて part1
2018/08/02 11:00更新
シニア期は”ありがとう”交換する時間
犬はその可愛らしさと純粋さゆえ、ずっとパピーのような気がしてしまいがちです。けれど、時計は確実に進み、その速さは、人の5倍から7倍といわれています。
「老いを認めたくない」という気持ちが、病気のサインを見逃したり、エイジングケアのスタートを遅らせたりということにつながりかねません。
犬の平均寿命が14.7歳と伸びた今、愛犬たちは犬生の半分をシニアとして過ごすのです。すなわち、シニア期を健やかに、そして尊厳を保って過ごさせてあげるのが、家族としての愛情です。
今回から2回にわたり、知っておくべき「シニア期のケア」についてお伝えしていきます。
 
ダックスフント
 

1 犬の老化現象とは?

人間においてもそうであるように、犬の老化にも個体差があります。また一般的に、小型犬よりも大型犬の時計の針が速く進むと言われています。犬種によっても、差がありますので、「〇歳からシニア」と杓子定規に定義するのは難しいものです。
 
ただし、いわゆる“老化現象”が見られ始めるのは、6~7歳が目安です。
人の時計の5~7倍で進行する犬の時計。小型犬の年齢を換算すると、7歳は人間の44歳くらいです。大型犬の7歳ならば、人間の54歳にあたります。
 
外見として分かる老化現象もあれば、直接に見ることのできない内臓機能低下などとして現れることもあります。歳を重ねると、代謝が落ち、身体の基礎となる細胞も再生スピードが遅くなります。それに伴い、身体の機能が低下し、身体に変化が生じます。
 
いつまで経っても愛らしく、パピーのような気がしていても、共に暮らすうちに、いつしかご自身の年齢を追い越し、おじいちゃん・おばあちゃんになっていくのです。
 
 

2.シニアの入り口(中年期) ~老化のサインを見逃しやすい時期~

小・中型犬7~11歳 大型犬6~7歳
 
老化は三段階で訪れると言われます。
犬の平均寿命が13.4歳となった現在、7歳からシニアに突入ということを考えれば、一生のうちの半分はシニア期ということです。いかに健康寿命をのばすかが鍵なのです。
わたしたち人間然り、犬の老化もある日突然始まるわけではありません。また個体差もありますので、毎日の観察眼がものを言います。ちょっとした身体の変化、行動の変化を見逃さないようにしてあげることが大切です。
シニアの入り口では見た目に大きな変化があまりないので、ちょっとした変化や病気のサインを見逃しやすい時期です。
 
<心・行動の変化>
□散歩のときのリードの引きが弱くなる
□寝ている時間が長くなる
□新しいものに興味を示しづらくなる
□疲れやすい
<身体の変化>
□ゆっくり歩くことが増える
□筋肉が落ち始める、後姿がさみしく見える
□被毛に白いものが混ざり始める(もっと早い年齢で出る個体もある)
□消化機能が衰える
□歯周病
 
*ケア*
・シニア期のフードに切り替える
・適度なお散歩
・脳(考える力)に刺激を与える遊び・一緒にできる遊び・知育玩具を再び取り入れる
・ドッグドックを受診する
 
 

3. 高年期 ~外見に老化がはっきりあらわれる時期~

小・中型犬12~16歳 大型犬8~11歳
 
身体の老化が進みます。外見上の老化をしみじみ感ずる時期でもあります。足の筋力が衰えてきますが、先々、長く自力歩行できるために、あるいは寝たきり防止のためにも、できるだけお散歩や適度な運動は続けましょう。無理はお互いにとって禁物です。人間のシニア同様、疲れが取れにくくなります。そのために、充分な休息は絶対的に必要です。
 
そして、これまではなんでもなかったことが、少しずつ困難になる時期でもあります。
たとえば、階段を上りづらそうにしている、ちょっとした段差につまずくなど・・・。 ケガをしてからでは遅いので、住宅環境の工夫もしてあげる必要が出てきます。シニア特有の病気にもかかりやすくなる時期ですので、病院での定期的な健康チェックは必須です。
 
<心・行動の変化>
□散歩がおっくうになる
□今まで出来ていたことが出来なくなる
□段差や階段につまずく
□頑固になる
□さびしがり・あまえんぼになる・独占欲が強くなる
 
<身体の変化>
□歩くときにもたつくようになる
□視力が衰える
□なんとなく食べづらそうになる
□トイレが近くなったり、トイレの失敗が起こったりする
□皮膚の乾燥、被毛のぱさつき
 
*ケア*
・血流を良くするためにおうちでのマッサージ、ふれあい
・トイレトレーニングやクレートトレーニングに再挑戦する(先々、人と犬両方の尊厳を保つために必要です)
・ドッグドック受診
 
 

4. 老年期 ~家族で支える時期~

 小・中型犬17歳~ 大型犬12歳
 
人間でいうと、80代。明らかな変化が次々と訪れます。体力が、がくんと落ちたり、歩くこと自体が困難になったりします。瞳も濁る場合がありますし、視力が落ちてもきます。これまで普通に生活していた部屋の家具でぶつかることもあるでしょう。認知症の症状が出る場合もあります。
そして、この時期に危険なことは、なんでも「歳だからね」と、老齢のせいにしてしまうこと。病気を見逃さないように、毎日の健康チェックをし、信頼できるかかりつけと対策を講じておきましょう。状態によっては、寝たきりの介護生活を送る必要もあります。お風呂にも簡単には入れなくなります。清潔にしてあげてQOL、そして威厳を保ってあげましょう。
 
<心・行動の変化>
□ほとんど寝ている
□耳が遠くなる(声や音に反応しづらい)
□トイレの失敗が増える
□好きだったものに対する興味が薄れる
□夜泣きをする(昼夜逆転)
<身体の変化>
□耳が遠くなる
□目が見えなくなる(白濁)
□関節の違和感(歩く・立ち上がるのが困難)
□やせる
□それまで大丈夫だったごはんが食べられない(消化できない)・食事の好みが変わる
 
*ケア*
・「聞こえないから」声を掛けないというのは失礼です。それまでと同じように話しかけましょう。
・必要な場合、サプリメントを摂りいれる
・ストレス緩和
・適度なドキドキわくわく体験
  (例:カートでお散歩したり、認知症対策として日光浴をさせたりするのも有効です。)
・自力で出来る限りは、過保護にせず補助をして歩かせてあげる
 
 

5.最後に

シニア期になると豊かだった表情は以前に比べて乏しくなるため、ご家族のほうが落ち込んでしまうケースも多く見受けられます。ご家族が「きまじめ」になりすぎないことも大切です。
シニア期は、家族として共に生きてきた歴史が成熟する時期でもありますから、きちんと身体に触れて、会話を重ねれば「うちのコが何を欲しているのか」をくみ取れる仲でもあるはずです。
 
心配のしすぎは衰えや病気を加速させますが、ご家族が綿密な備えをしてこそ、どんと構え、穏やかで尊厳を保ったシニアライフを過ごさせてあげられるのです。
 
シニア期の変化に悲観せず、かけがえないcounterpartがシニア期に突入したことを自覚し、受け入れて、「シニア期は“ありがとう”を伝える」大切な時間と考えましょう。
 
パピーにはパピーの可愛らしさあるように、シニアには一緒に生きてきた愛情の分だけの愛おしさがあります。重ねてきた歴史と、絆が大きな力なのです。
 
柴犬
 
次回はシニア期に気を付けてあげたい病気について綴ります。
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ゆりかご主宰 潤子

一般社団法人 人と犬の日本共生学協会  潤子(代表理事)

東京大学卒業。臨床心理学、栄養学、動物行動学を学び、一般社団法人 人と犬の日本共生学協会 を設立。


幼い頃から愛すべき犬たちと暮らし、犬という生き物の素晴らしさに惹かれ続け、恋をし続け、今に至ります。

真っ直ぐな気持ちで寄り添ってくれる犬と生きる喜びを分かち合い、言葉を持たぬ彼らの心身の声に耳を傾けるための方法を、ゆりかごの活動を通してお伝えしています。

counterpartであるパピヨンのしずくと凪と暮らす日々が私の宝物です。 理念は”犬のなかに犬を見出すのが自然への敬意”