10年程前には年間10万匹以上のわんちゃん達が殺処分されていた日本。
人々の動物愛護への関心の高まり、殺処分ゼロを目標とした様々な活動の影響から、不幸なわんちゃん達の数は年々減少していますが、今なお年間3万匹近くのわんちゃん達が殺処分されていることをご存じですか?
今回は、今後さらに不幸なわんちゃんを減らすために参考にしたい、アメリカなどにみられるノー・キル シェルター、およびClear the Shelters Dayというイベントについて詳しくご紹介します。
by wabisabi2015, "Animal Shelter Painting Event " https://www.flickr.com/photos/necosky/4552000096/
ノー・キル シェルター
ノー・キル(No Kill)と聞くと、殺処分が全く行われていないと誤解されがちですが、実際はそうではありません。
アメリカなどにみられるノー・キル シェルターは、“たとえシェルターがいっぱいであっても、健康または治療可能な動物の殺処分は行わない動物保護施設”と定義づけられています。
つまり、日本の動物愛護センターのように、保護期間が過ぎた、引き取る人がみつからない、といった理由での殺処分は行われず、可能な限りの譲渡が行われています。
しかし、人を噛んでしまったわんちゃん、攻撃性がひどいわんちゃん、治療が不可能な病気のわんちゃんなどについては安楽死が行われているのが現状です。
また保護犬が多すぎて、ノー・キル シェルターとしての経営を行うことができない地域もまだたくさんみられます。
by Jeffrey Beall, "Folks at the Denver Animal Shelter " https://www.flickr.com/photos/denverjeffrey/5825269640
ボランティアが主体
ノー・キル シェルターの多くは、たくさんのボランティアの人達の助けによってその活動が成り立っています。
シェルターにおけるわんちゃん達のお世話、一時預かり(フォスター・ケア)、リハビリやトレーニングの手助けをはじめとし、写真撮影、譲渡イベントの開催など、ノー・キル シェルターにおけるボランティアの役割は様々です。
なかには空き時間にシェルターを訪れ、わんちゃん達のそばに座り本を読むだけの人もいますが、このこともわんちゃん達が人と触れ合うための大切なボランティアの役割なのです。
アメリカでは、中学・高校生の頃からボランティア活動に積極的に参加することが一般的です。たくさんの人達が“自分ができる範囲でのボランティア”をすることで、シェルターに引き取られたわんちゃん達は、新しい家族を見つけることができるのです。
by Eric Sonstroem, "Dogs Playing " https://www.flickr.com/photos/sonstroem/16899418635
Clear the Shelters Day
アメリカでは年に一度、“National Clear the Shelters Day(シェルターを空っぽにする日)”というイベントが開催され、数多くのシェルターが参加しています。
このイベント当日には、譲渡費用の支払いが免除され、無料でわんちゃん達を引き取ることができます。
イベントに賛同するシェルターの中には、1週間ほど前から譲渡費用の割引を行い、空いたスペースに保護犬があふれている地域からわんちゃん達をさらに引き取りイベント当日に備える場合もあります。
今年8月15日に実施された“Clear the Shelters Day”では、アメリカ全土で何と1万9142匹のわんちゃんを始めとする動物達が、新しい家族に引き取られました。
さいごに
アメリカのノー・キル シェルターの多くは、誰でも気軽に訪れることができ、従来の保護施設のイメージとは異なる明るい開放的な施設です。
このような施設が日本にも普及し、ペットショップなどでわんちゃんを購入する前に保護犬を引き取るという選択もあることを多くの人達に知ってもらい、殺処分ゼロに向け前進していけることを願っています。
小さい頃からの夢であった動物のお医者さんを本業としながら、主婦・フリーランスライターとして日々奮闘中。
女王様のような高齢ハスキー、食べることが大好きなビーグル、猫2匹と一緒に暮らしています。